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2011/04/14

脆性破壊と延性破壊

 昨日も記した、原子炉圧力容器の元設計技術者である田中三彦氏の著した「原発はなぜ危険か」について、もう一つの記憶に残る記述のことを追記として書き留めてみます。
 金属の破壊区分として、延性破壊と脆性破壊があります。延性破壊とは破壊断面に伸びが生じた結果として引きちぎれる様に破壊することです。一方、脆性破壊とは破壊断面に伸びが生じないで、ガラスや陶器の様に、割れるように破壊することを指します。
 さて、今回のテーマとなるのは脆性破壊、つまり材料の脆さを表す特性のことです。この特性は、素材中の成分だとか熱処理よって変わってきますが、もう一つの要素として素材の温度があるそうです。この素材の温度と脆性破壊の関係を評価する試験があるそうが、素材の温度を低下させていったとき伸びを伴わない破壊、すなわち脆性破壊が何度で生じるかを見定めるものです。この温度のことをNDT温度と云うそうです。
 例えば、ある船舶における鋼材のNDT温度が0度Cだとすれば、北極海における氷山との衝突が、素材の粘り強さがないがために、船腹が割れ裂けて沈没に至ることもある訳です。これが、処女航海において悲劇の沈没を起こしたタイタニックの原因との説もあるようです。
 さて、本論の原子炉圧力容器の厚板鋼板のことに戻ります。原子炉圧力容器の場合、NDT温度に大きな影響を及ぼす要因として、核分裂の際に生じる中性子線の照射があるそうです。この中性子線による素材の脆性劣化のことを中性子脆化と呼ぶそうですが、原子炉の運転時間に応じ、先のNDT温度は上昇していくのだそうです。
 原子炉圧力容器内には、予め素材と同一の試験片(テストピース)が用意されており、核燃棒の交換などの際に、NDT温度の評価を行うそうです。すると、新作時のNDT温度がマイナスだったものが、100度Cを超えるという場合すらが出てきているのだそうです。
 NDT温度を下回る温度下においては、地震動による加振など物理的なショックだけでなく、急激な温度変化などの熱ショックにおいても、致命的な破壊を起こす恐れがあるそうです。怖い話です。

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コメント

貴重な実体験としても意見、ありがとうございます。
何れにしても、怖い話しですし、これに限らずですが、余りにも緻密ということと掛け離れたシステム設計の数々に驚くばかりです。こんなモノ、電気が足りようが足りまいが、一刻も早く止め、廃炉にしなければ日本が滅びます。

私は、大学で材料の破壊力学(特に溶接部)の研究室におりました。従いまして、中性子照射脆化も承知いておりました。
35年くらい前になりますが、民間の企業の研究所にいて、関係企業と設立した委員会で、もんじゅの設計前に、使用されるステンレス鋼の高温(600℃よりも高かったと思う)で長期間応力が付加された際の材料の強度や伸び(これをクリープ特性と呼びます)のデータを収集し、設計者のために必要な材料強度データを提示する作業をしていました。ご存知のように、原子炉は20-30年以上の設計寿命が必要なのですが、当時はその様な何十年も数百度に保持しておいたデータなどはありません。もちろん、数十年間の中性子照射の脆性度合いを評価するデータは、存在しません。また、仮にデータがあったとしても、数十年前の材料に関するもので、これからもんじゅに採用しようとする材料と同じではありませんでした。
 中性子照射の脆性に関しては、当時すでに出来上がった原子炉内に試験用の材料を持ちこんでおき、年が経れば、取り出して試験に供するという方法です。
 もちろん、安全率を考慮して設計はなされるのですが、上述したように長時間の高温データや中性子照射脆性データはなく、もんじゅ以外のその当時以降にも建設された原子炉にも、あくまで推定の数値を適用しています。絶対安全とは断言できないでしょうね。

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